私は伝票を拾おうとしゃがみ込む……その時、隣のボックス席から誰かが出てきた気配を感じた。
私の頭上に影が覆い被さる。
頭を上げようとすると、その“誰か”のものと思われる手がスッと伸びてきて、私より先に伝票を掴み取った。
「あ、すいません。」
拾ってくれたその人にちゃんとお礼を言う為に、再度頭を上げ、立ち上がろうとすると、背後から胡兎の強張った声が聞こえてくる。
「なんで…いつからそこに居たの!?」
え…?
驚いて顔を見上げると、そこには見慣れた人物が眉間を寄せた険しい顔で仁王立ちしていた。
紫のワンポイントが入った特徴的なサイドテールがトレードマークのその人物は……。
「別にいつから居たっていいじゃん…!」
「寧音…!」
私は思わず息を呑んだ。
