「朱理は聞いてないのか?もうすぐ、スタジオのセットが新しく変わるんだよ。」
「あ、そうだったんですか。」
「こんなご時世だからな、本来なら年明けのタイミングで変わる予定だったんだが色々と遅れていて…せめて来週の朱理のグループ出演時には間に合わせたかったんだ。」
なんだかんだ言ってこの人は優しい。
最初に聞いていた噂では、相当に頑固な人で、自分の番組に出演させるタレントには自分のやり方を徹底的に通す。
そして意にそぐわない場合はお払い箱にされる。
相手の所属する事務所が、たとえどんな大手だったとしても決して引かないんだとか。
それを知った私は、スタジオフロアから放送中のこちら演者側を見ている犬飼ディレクターの姿を見つけては、いつもその視線を避けるようにしてビクついていた。
