…こんな真剣な表情で仕事する人に当たったのは初めてかもしれない。




というか、“真剣”、というよりも“深刻”という方がぴったりくる気がする。




私の顔から手を離した隙に、鏡の中のヘアメイクさんの顔を注意深く観察すると、その額には冷や汗が流れ、顔色がどうも悪い。




もしかして、体調がすぐれないのではないだろうか?





「あの…大丈夫ですか?」





私が声を掛けると、何かを喋ろうとしたと思いきや、突然フッと俯き、そのまましゃがみ込んでしまった。




私は驚いて椅子から立ち上がり、




「大丈夫ですか!?」




しゃがみ込むヘアメイクさんの背中に手を添え問いかける。





私のいるドレッサーの反対側で寧音の髪型をセットの仕上げをしていたもう一人のヘアメイクさんもすぐに異変に気づき、駆け寄ってきた。