「コレ、朱理が好きだったやつでしょ?ほら。」




無邪気にお菓子を差し出した手に触れた時、隠している例の件よりも、たった今、寧音に嘘をついてしまった事実の方が私の胸に差し迫ってくる。





強情なところもあるけれど、寧音は十八歳という年齢にしては思考や行動が幼い、と感じる時がある。



それに、私と真鵺に対しては多分、仕事仲間である前に、友達、というか、もっと言うと姉妹のような関係を求めてるんだってわかる。



もちろんそれは良くないし、出来ない。



だけど、そういう寧音を騙す形になってしまった。




自分が嫌いになりそうだった。







再びスタッフさんがやって来て次の順番の寧音が呼ばれ、私は一人きりになる。



私がソロの撮影で一番最後になるのは珍しいことだった。



静まり返った控え室の中、寧音が置きっぱなしにしたお菓子のゴミを私は黙って捨てた。