洗面台の鏡の前に立つと、さっきの二人組が使っていた化粧品の匂いが微かに残っていた。
無意識に蛇口の下に手を出すと、自動で吹き出た水はちょうどいい感じの温水に調節されていて、ほんのちょっとだけ二人組に感謝してみたりする。
すっかり冷たくなっていた手がみるみるうちに温まり、強張りがほぐれていく。
気持ち良さからそのまましばらく温かさを堪能していると、ふと蛇口の傍らのディスペンサーがやはり黄色を基調にしたデザインであることにあらためて気づいた。
この黄色い物達がいくら頑張ったところで、このトイレに女子達の悪口による邪念が澱み続けるかぎり、風水の邪気を祓う浄化パワーもきっと効力なんて無し。
黄色いディスペンサーに対して、なんだか申し訳無い気持ちでプッシュすると、“きゅうぅっ”っていう哀しい音をたてて液体ソープを吐き出した。
