地味子には秘密があるらしい!

 「お前、今日から俺のものな」

 「……はあ」

とある平日の昼休憩。

休憩部屋の入り口前、人気のない廊下。

突然の私物化宣言に困惑し、相手の顔をまじまじと見る。

濡羽色の髪に、赤い瞳が特徴的な美男、岡島壱夜。

彼も休憩部屋に出入りできる5人のうちの1人だが、面と向かって話すのは今日が初めて。

しかし、初対面も同然の人に対して『俺のもの』とは。

失礼がすぎるのでは?それに言葉数が少なすぎる。

これは愛の告白なのか、奴隷宣言なのか……


 溜息を吐きたくなりながらも、素直に疑問を口にしてみる。

 「えっと……どのような意味で?」

 「今日から俺の女、という意味だ」

 「つまり?」

 「付き合ってくれ」

最初っからそう言えよ。回りくどいことすんな。

と零しそうになるが、なんとか喉の奥で耐えることに成功。

先輩後輩以前に、彼は御曹司だ。無礼を働けば国外追放もあり得る。

ここは慎重に答えを選ばなければ……と背筋を伸ばし、恐る恐るの返事。