地味子には秘密があるらしい!

 「え、僕の問題なのにもう終わってるの……?」

と呟いた。虹季と同時に頷いてみせる。

困惑したのか、オロオロと狼狽を見せる恭弥。

なんだか、小動物を連想させる挙動だ。

ちょっと可愛いな。ポワポワした気分になる。

……さてと、帰るか。

思考は思ったよりも素早く切り替わった。

二人に軽くお辞儀をし、にこやかに去る準備。

 「ではお先に失礼しますね」

リュックを背負い直し、次期帰宅部エース並みの完璧な退場を……

なぜだ。なぜ私の袖を引っ張るんだ早乙女虹季。

振り返ってみれば、そこには逃がさねぇという様子の少年が。

やばいと思った。

このピュアな瞳に詰められた、面倒ごとの密度は凄まじい。

即退散だ、今すぐ猛ダッシュ……!

 「恭ちゃんを助けてくれたんでしょ?お礼するよ!」

 「……行かせていただきます」

あばよお布団。お前とはしばしの別れだ。