地味子には秘密があるらしい!

 恭弥が口をあぐあぐと動かし、捻り出したような声で

 「ぜ、全然強要なんかされてません。僕、自分の意思で選んだので!大丈夫ですっ!」

と叫んだ。屋上階段全域に反響した。

クレッシェンドじゃん。だんだん声が大きくなる。

塞いでいた耳を開け、恭弥を見やれば。

彼の顔は耳まで真っ赤だった。

それを些細ながら可愛いと感じてしまう。


 「す、すみません……ごめんなさい……」

 「別に大丈夫。こっちこそごめん……ってそれはもう言ったか」

二回も謝罪するのはうざいかな、と思い発言を取り消す。

すると恭弥は緊張が解けたように、小さく笑って見せた。

 「あ。す、すみません。ただ小柳さん、優しいなぁって」

 「優しい?私が?いや、確かに優しいことしたか」

 「ええ。それでもって強い。僕なんかとは大違いで……」