地味子には秘密があるらしい!

 膝下まで覆い隠すスカート。

コンタクト代わりの重い黒縁眼鏡。

いつしかの派手髪からは一転、黒髪のおさげ頭。

という地味子姿で、目前に聳えるそれを見上げる。

 「でっか。これが名門白鳥(しらとり)……資金がたんまりってことかあ」

そう。この宮殿を彷彿させる建物は名門、私立白鳥学園。

幼小中高大、全ての校舎が隣接する学び舎は豪華絢爛。

西洋風の煌びやかな装飾に、色とりどりの花が咲き誇る庭園。

ステンドグラスの窓を見上げ、高鳴る胸を押さえつける。


 ここに孤児院出身で元不良の私が通う……

ハードル馬鹿たけぇなおい。

噂によると、家柄の上下関係も激しいとか聞くし……

よし、虐められぬためにも、非行を繰り返さぬためにも。

 存在感空気以下で行こう。

以後三年間の目標を胸に刻み、大きな校門をくぐる。

そんな桜の花びらが舞う、暖かい春の日のことだった。


 【地味子には秘密があるらしい!】