「満様は随分慣れてるようですね」
「まあ、よく通ってたから、ここはぼくの思い出の場所でもあるんだ」
「思い出の場所……」
「うん、母さんの給料日はよくここに来てたんだ、そして母さんが帰ってくるのが遅い時はおっちゃんに面倒見て貰ったんだ」
「だから…ここはぼくにとって思い出の場所なんだ」
満がそう言えば悠は頷く
「満様は奥様から、店主さんから、たくさんの愛情をもらって育ってきたんですね」
「そう、だな…言われてみればそうかも」
「だからこそ満様はこんな風に素敵な方になったんですね。」
「そんな事ないよ、ぼくはそんな立派な人間じゃない」
「そんな事、ありますよ、満様は退屈だらけの私の人生に彩りをもたらしてくれた。」
「…そんな事はした記憶はないけど」
「ありますよ、私は満様が来るまで敷かれたレールを歩いてきた、けど、貴方と出会ってそれは変わった。兄さんが戻ってきた時、今までの私ならきっとこうしてもう一度戻ってくることなんてなかった、けど貴方が連れ戻してくれた。あの時…神宮寺家に仕えてから初めて自分の意思で行動できたんです。」
「悠…ぼくは何もしてないよ、あの時だって悠が自分で選んだんだから」
「それでも、満様が何気なくかけてくれた言葉が私を変えたんです、本当にありがとうございます。」
「こっちこそありがとう。ぼくも悠と一緒に居るの好きだから」
「満様…!」
そんなやり取りをしていると店主が定食とだし巻き玉子を運んでくる
「はいよ!」
「わ…久しぶりだな!やっぱこれだよなー!」
満は目を輝かせながらそう言う一方悠は
「すごい…見た目から美味しいのが伝わってきます…!これはどういった調理方法を!?」
調理科の専門学生としての血が騒いだのか店主に作り方を聞いていた
「おお…見た目でわかるのか!さては君料理人か?」
「一応…調理師の専門学生に通っています」
「なるほどな、どうりで…で、調理方法に関してだが一般的なやつと変わんないよ、あれだったら調理時間を変えてみたらどうだ?」
「了解です、今度試してみます!」
「おお!頑張れよ!」
「はい!」
「じゃあ」
「「いただきます!」」
2人はそう声を合わせおかずを1口食べる
「やっぱ美味しい!」
「はい、こんなにクオリティの高いさば味噌を食べれるなんて…」
「いや〜嬉しいねぇ!ありがとうな!」
店主はそう嬉しそうにする
しばらく2人は美味しい料理を堪能した
「ありがとう!おっちゃん!また来るな!!」
「とても美味しかったです、また来ますね」
「ああ!いつでも待ってるからな!!」
そう言い店主は2人を見送った
