旦那様に呼び出されたなんとなくそろそろな気がしていたので荷物はもうまとめてある
伝えられた言葉は想像通りで意外と寂しさはなかったあくまで伝えられた直後はだが
荷物を取りに部屋へ戻ると改めて寂しさの実感が湧いた

「……満様すみません。」

きっとここで貴方へ伝えてもむしろ別れが辛くなるだけだ、それに貴方は優しいから引き止めなんてしないで受け入れてくれる
だからこそ伝えずにひっそりと去りたかったお互いが忘れ元通りの生活に戻れるように…
けどどうしても涙を堪えきれなかった

「なんで…」
兄の代わりに神宮寺家に仕えるようになってからなるべく自身の感情を表に出さないようにしてきた。
なのに今では自然と涙が零れてくるそれだけじゃない
前よりも表情が分かりやすくなったって言われることが増えた

「満様…貴方のおかげですね」
あの時私に優しく言葉をかけてくれた貴方のおかげです。ありがとうございます…そして
「すみません、勝手にいなくなって」

そんな言葉は誰にも届かなかった