「わたし、薫人《ゆきと》が好き…」

おれの頭に手を回しながら結香《ゆいか》は囁く

「おれのが好きだけどな…?」

結香の両手に抱かれながら結香の首元でおれはこたえる

「負けずキライかよ…」

そう言っておれを抱く両手に力が入ってくのがわかる

二人の時間が止まってるかのようだった…
正確には流れる時間から取り残されてるかのようだった… 静寂が二人を包む…おれと結香《ゆいか》は抱き合いお互いを確かめあった
これから始まる二人の時間に期待と胸を膨らませていた



「今度、ちゃんとプロポーズする いいだろ?」

「わたしは今日ので充分なんだがなー?」

ベッドに腰掛けながらまだ横になってる結香に声をかける 
結香のほんの少し上気した顔が満足度を物語ってるように見えた

「そういう訳にはいかんよ ケジメはちゃんとつけようぜ?」

「どーせ返事はわかってるんだからね?」

そう言って見せる笑顔は おれだけの笑顔だった

「それとさ、」

「ん? なあに?」

「今度会う時には匂いつけとくわ」

「どーゆーこと??」

「さっき結香が『おれの匂いがない』って言ってたろ? だから好きな匂いの香水でも見つけてふってく」

「へぇー、おもしろそ! 楽しみにしとく!」