忘れられぬにおい


「そうだったんですか… あなたが薫人《ゆきと》の… 本当にかける言葉もございません…」

気丈に振る舞う両親を見てわたしは我が身を恥じた

「あの、ここで封筒を開けても構いませんか?」

「えっ!?」

見せれるものなら薫人の書いたものを知ってほしかった 大切な息子の忘れ形見を

わたしは遺影が置かれた部屋で封筒とプレゼントの小包を開いた
プレゼントから漏れ出す匂いで中身はもしや香水?と思ってはいたが、でてきたそれはまさしく『香水』だった
しかも 香水の匂いは嗅ぎなれた匂いだった
わたしが普段からつけている香水の匂いに限りなく近い香りがしていた

『どうしてこれが…』

わたしは封筒を開け手紙を読み始めた
両親が息を呑んで食い入るようにわたしを見ているのがわかる

わたしは涙を堪えることができなかった
ぽたぽたと手紙に落ちる涙や鼻水を拭うこともかなわなかった…
わたしは声を出して泣いていた
薫人がわたしに渡そうとしたプレゼントの意味…
もう薫人につっこむこともできない現実…
再び泣き崩れたわたしを涙を流して介抱してくれる両親…

もうやだ… やだ… やだよ… 見たくなかった…
知りたくなかった… 知っても薫人がいないんじゃ意味ないじゃん…

わんわん泣いた… 頭がボーっとして真っ白になっていく… わたしの視界と意識はフェードアウトしていつた…