スイートハニー

『もしかしてヒロキ、心配してくれたの?』
「………」
『なあんだ、ヒロキでも妬いたりするんだ~』

 リオが受話器越しに嬉しそうな声でそう言った。図星をさされただけにちょっとだけムッとする。

「お前な、調子乗ってたら吊すぞ」
『へっへっへっ、やれるもんならやってみなさい、遠距離だから怖くもなんともないもんね』

 声高々にふんぞり返っているであろうリオに、俺はふっと鼻で笑ってやった。

「言ったな?じゃ、来週お前んとこ帰るからそん時は覚えとけよ、足腰立たなくしてやる」
『え、待って、今来週帰るって聞こえたんだけど……』
「もともとはそれ伝えるために電話したんだよ」
『何それ早く言ってよ!』
「どっかの誰かさんがいきなり不機嫌になるからだろ」

 今度は俺に図星をさされたリオが言葉に詰まったのか、黙り込んでしまった。本当にいちいち反応が分かりやすい。

「ちゃんと来週は予定開けとけよ」
『はーい』
「もちろん夜も、な」
『え……っ』

 途端に黙りこむリオに俺は笑いを噛み殺していた。きっと今頃顔を真っ赤にさせているに違いない。

「言ったろ、足腰立たなくさせるって」
『え!あれってそういう……!!』

 焦ったリオは電話越しでもわかるくらい挙動不審で、反応が大袈裟で、どうしようもなく可愛い。この可愛すぎる生き物をどうしてくれよう。

 内から込み上げる愛しさに胸がいっぱいになる。

「俺を妬かせたリオが悪い、覚悟しとけ」

 意地悪にそんな事を言ってやると、リオは恥ずかしそうに『ヒロキのバカ、変態……』と小さな小さな声で呟いた。

 顔を見なくてもリオがどんな表情をしているのか、容易に想像がつく。

 これだから俺はリオを手放せない。どんなに悩まされたって彼女の嬉しそうだったり照れていたり、そんな表情を見ただけで全てがどうでも良くなってしまう。

 彼女のどんな表情も俺が独り占めしてやれたらどんなにいいだろう。そんなことを思ったことはリオには秘密だ。

 それから数分の通話を終了した後俺は、彼女に会った夜は沢山愛してやろう、と心の中で密かに誓った。

fin.
2016.05.31
2019.04.11
2025.05.30