名前も知らない貴方とだから恋に落ちたい






「俺、夜中によくここに来るんです。人も居ないし」


「へぇー。仕事終わりですか?」


「えぇ、そうです。それで、空が明るくなってきたら帰ります」


「それは、お疲れ様ですね…。毎日この景色見れるの、羨ましいです」





仕事終わりにここに寄れたら、仕事もどうにか耐えられそう。


嫌なことは忘れられないけど、一瞬でも手放せるのは助けになる。





「じゃあ、君も毎日来たら良いのに」


「え!?それは…。遠いので」





と言ったけど、毎日来ても同じように感動するだろうし、毎日来れるなら来たい。





「でも…、たまに来たいです。ここ、癒されます」


「是非そうしてください。癒されに来てください。俺のおすすめは、夜景ピクニックです」





ご飯は食べてしまったからと、缶のココアが私の前に差し出される。





「乾杯しましょう」


「もらえません!初対面だし…」





初対面だし、男の人だし。


そう続けようとした。




断ろうと隣に座っている顔を見て、その先が出なかった。


夜景に気を取られてしっかりと顔を見ていなかったけど、日本人離れした顔立ちで私には刺さる、好みの人。