名前も知らない貴方とだから恋に落ちたい






いくら時間があっても足りないけど、子どもみたいにはしゃぐと心が満たされる。


離れて好青年の顔を見ようととする私と、見られまいと私を強く抱きしめる好青年との攻防。




一分ほど続くと、私も諦めて大人しくなった。


好青年のニヤけた顔も止まったようで、ようやく顔が見られた。



相変わらず整った顔をしていて、無表情に近い微笑み顔でも輝いて見える。




「もう本当に帰らなきゃ」


「うん、気をつけて。またね」


「またね。あなたも気をつけて山口まで帰って」




見つめ合って、微笑み合って、今度こそ車から降りて、ドアを閉めた。


ヒラヒラと手を振ると、向こうも同じようにヒラヒラと手を振り返してくれて、ゆっくりと車は発信してコンビニを出て行った。





「…仕事頑張らなきゃ」




また寂しさは生まれるけど、楽しかった時間を思い出せば乗り越えられる。



太ももを軽く叩いて、気合を入れた。