味気なくはなかったけど、誰かと食べるご飯は何でも美味しく感じられる。
一瞬だった数時間が楽しかったと思い返すと、もうお別れなのが寂しくて、頷きながら泣きそうになってしまった。
ここで泣いちゃいけない。
でも車から出たくない。
そんな葛藤をしながら、吹っ切るように車を出ようとドアに手をかける。
〝じゃあ、また〟
ドアを開けてコンクリートに足をつけようとすると、何かが引っかかって体が引き戻された。
後ろを振り返ると、私の右腕を好青年が掴んでいた。
好青年の目が潤んでいるように見えるのは、私の勘違いだろうか。
でも私の目も潤んでいるから、勘違いか分からない。
「ごめん。引き止めたらいけないのは、分かってる。でも、手が言うこと聞かなかった」
〝また、会える?〟
連絡先も知らないから、次会えるかは、いつも賭け。
だから好青年の質問には、正確な答えが返せない。
「どうかな。会えると良いけど、昨日の私みたいに探し回らなきゃ」
「そうだね。また探し回る。引き止めてごめんね」
突き放すつもりはなかったけど、きっと私が突き放したような言い方に取られたと思う。



