好青年の言葉は、頷くばかりで圧巻。
押し付けるようなお勧めの仕方じゃなくて、納得できる正論。
説明してくれている横顔は、ドヤ顔ではなく真剣な表情で、もしかしたらそのおかげで救えた大事な人が居たのかもしれないと思った。
好青年に彼女は居なかったらしいけど。
「じゃあ私に何があっても、すぐに来てもらえるね」
「そうだよ。飛ばして会いに行く」
「…ありがと」
自分から話を振っておいて、すぐに肯定が返ってきたから恥ずかしくなった。
「あ、もうこの辺で下ろしてもらおうかな。長時間ありがとう」
一人で景色を楽しみながら自転車を漕ぐのも良いけど、話し相手が居ると違う楽しみがあって良いなと思う。
時間が過ぎるのはあっという間で、外はすっかり明るくてジリジリと火が照り始める。
これから家に帰って一休みして、夕方から始まる仕事に向けて準備だ。
好青年も一休みしてから帰るそうで、通りすがりのコンビニに止めてもらう。
「楽しかったね」
「うん、楽しかった。おにぎりも美味しかった」
「相手が居ると、味気ないご飯も美味しくなるよ」



