「まぁでもあくまで噂だしね。本当のところは分からないけど」
「そうだね。噂、だもんね」
「私は遠くから拝むくらいが丁度いいけどな〜」
そんなセリフを耳にしながらパソコンに向き合う千隼くんに視線を向ける。
すると私の視線に気づいたのか顔を上げた千隼くんとバチッと目が合ってしまった。
慌てて視線を逸らすものの時すでに遅く、千隼くんは長い足でこちらまで向かってくる。
驚いたように目を見開く真夏ちゃんをよそに、千隼くんは私を見下ろして妖艶な笑みを浮かべた。
「CGデザイナーの桜庭さんだな。あとでCGデザイナーとしての話を聞かせて貰えるか?」
「は、はい」
久しぶりに交わした会話は誰が聞いてもただの上司と部下の会話だろう。
いきなりこちらに来て私に話しかけるとは思っていなかったため真夏ちゃんは驚いて硬直していた。
意味深げな笑みを残して離れようとする彼は去り際に私のデスクに小さな紙を置いた。
誰にも見られないように死角になるような場所に置かれたその紙を、私自身もバレないように手で隠す。
「やっぱ近くで見るとイケメンだねぇ早乙女さん」
「う、うん。確かに」
真夏ちゃんと他愛もない会話をした後にドキドキと高鳴る心臓を抑えながらゆっくりと紙の中身を確認する。
バレないように私だけに伝わるように渡されたその紙は、まるで秘密を共有しているようで背徳感というスパイスがより刺激的だった。
紙を広げるとそこには綺麗な字で文字が書かれていた。
私だけに向けられたその言葉は私の心を乱していく。
"今日の夜、話そう。終わったら外で待っててくれ"
少しだけ大人に感じるその口ぶりが会えなかった時間を表しているようで寂しく感じる。
千隼くんへの想いは過去にして前に進もうと沙羅ちゃんと話したばかりだと言うのに。
私の心臓はその気持ちと裏腹にバクバクと高鳴り、千隼くんと会えることに期待してしまっていた。
あくまで幼なじみとして話すだけだと何度も言い聞かせる。
10年間何をしていたのか、どんな風に生きてきたのか、そんな話が聞けたらそれだけでいい。
それ以上は望まない。
小さなそのメモを私は綺麗にたたみ、自分のデスクの引き出しにしまった。
その後、ひたすらパソコンに向き直り制作を少しづつ進めていく。
作業自体は順調に進んでいるため、定時に上がっても問題なさそうだ。
制作しているとあっという間に時間は過ぎていき、時計の針は18時を過ぎていた。
デスクの上を片付けて自分のパソコンをカバンの中へしまった私は真夏ちゃんと要くんに声をかける。
2人はまだ少しだけ作業をして帰るそうで、今日は先に上がらせてもらう旨を伝えた。
「お疲れ様つむつむ。また明日ね」
「紬希ちゃんお疲れ様。気をつけてね」
「うん、ありがとう。2人ともまた明日」
足早に会社を後にする。
私が働く株式会社e-nightはゲーム制作会社としては大手のため、会社自体もとても大きい。
1階のロビーには社員証でしか通れないセキュリティがあるくらいには大きな会社だ。
警備員も常駐しており、足早にエレベーターに乗り込み、3階から降り外に出ると壁際にもたれてスマートフォンを弄る千隼くんがいた。
身長もだいぶ伸び、身体もすごく大きくなった気がする。
私の記憶は高校3年生で止まっているため、随分大人になった千隼くんを見るとまるでタイムマシンに乗ってきたのかと思うくらいだ。
「あの、待たせてごめん、なさい」
「別に待ってないから気にするな」
「早かった、んですね終わるの⋯」
「⋯なんで敬語?俺らの仲だろ?」
「う、うん」
私を見つめるその瞳はとても大人っぽくてそれでいて妖艶で、こんなふうに成長した千隼くんにドキドキしてしまう。
随分身長も高く、服の上からでも分かるくらい筋肉質なその身体は立派な男性だった。
「行こう。気になる店があるんだ」
「うん」
少しだけ距離を離しながら千隼くんの後を追う。
足の長い千隼くんは私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれており、そういう優しさは昔と変わってない。
「そうだね。噂、だもんね」
「私は遠くから拝むくらいが丁度いいけどな〜」
そんなセリフを耳にしながらパソコンに向き合う千隼くんに視線を向ける。
すると私の視線に気づいたのか顔を上げた千隼くんとバチッと目が合ってしまった。
慌てて視線を逸らすものの時すでに遅く、千隼くんは長い足でこちらまで向かってくる。
驚いたように目を見開く真夏ちゃんをよそに、千隼くんは私を見下ろして妖艶な笑みを浮かべた。
「CGデザイナーの桜庭さんだな。あとでCGデザイナーとしての話を聞かせて貰えるか?」
「は、はい」
久しぶりに交わした会話は誰が聞いてもただの上司と部下の会話だろう。
いきなりこちらに来て私に話しかけるとは思っていなかったため真夏ちゃんは驚いて硬直していた。
意味深げな笑みを残して離れようとする彼は去り際に私のデスクに小さな紙を置いた。
誰にも見られないように死角になるような場所に置かれたその紙を、私自身もバレないように手で隠す。
「やっぱ近くで見るとイケメンだねぇ早乙女さん」
「う、うん。確かに」
真夏ちゃんと他愛もない会話をした後にドキドキと高鳴る心臓を抑えながらゆっくりと紙の中身を確認する。
バレないように私だけに伝わるように渡されたその紙は、まるで秘密を共有しているようで背徳感というスパイスがより刺激的だった。
紙を広げるとそこには綺麗な字で文字が書かれていた。
私だけに向けられたその言葉は私の心を乱していく。
"今日の夜、話そう。終わったら外で待っててくれ"
少しだけ大人に感じるその口ぶりが会えなかった時間を表しているようで寂しく感じる。
千隼くんへの想いは過去にして前に進もうと沙羅ちゃんと話したばかりだと言うのに。
私の心臓はその気持ちと裏腹にバクバクと高鳴り、千隼くんと会えることに期待してしまっていた。
あくまで幼なじみとして話すだけだと何度も言い聞かせる。
10年間何をしていたのか、どんな風に生きてきたのか、そんな話が聞けたらそれだけでいい。
それ以上は望まない。
小さなそのメモを私は綺麗にたたみ、自分のデスクの引き出しにしまった。
その後、ひたすらパソコンに向き直り制作を少しづつ進めていく。
作業自体は順調に進んでいるため、定時に上がっても問題なさそうだ。
制作しているとあっという間に時間は過ぎていき、時計の針は18時を過ぎていた。
デスクの上を片付けて自分のパソコンをカバンの中へしまった私は真夏ちゃんと要くんに声をかける。
2人はまだ少しだけ作業をして帰るそうで、今日は先に上がらせてもらう旨を伝えた。
「お疲れ様つむつむ。また明日ね」
「紬希ちゃんお疲れ様。気をつけてね」
「うん、ありがとう。2人ともまた明日」
足早に会社を後にする。
私が働く株式会社e-nightはゲーム制作会社としては大手のため、会社自体もとても大きい。
1階のロビーには社員証でしか通れないセキュリティがあるくらいには大きな会社だ。
警備員も常駐しており、足早にエレベーターに乗り込み、3階から降り外に出ると壁際にもたれてスマートフォンを弄る千隼くんがいた。
身長もだいぶ伸び、身体もすごく大きくなった気がする。
私の記憶は高校3年生で止まっているため、随分大人になった千隼くんを見るとまるでタイムマシンに乗ってきたのかと思うくらいだ。
「あの、待たせてごめん、なさい」
「別に待ってないから気にするな」
「早かった、んですね終わるの⋯」
「⋯なんで敬語?俺らの仲だろ?」
「う、うん」
私を見つめるその瞳はとても大人っぽくてそれでいて妖艶で、こんなふうに成長した千隼くんにドキドキしてしまう。
随分身長も高く、服の上からでも分かるくらい筋肉質なその身体は立派な男性だった。
「行こう。気になる店があるんだ」
「うん」
少しだけ距離を離しながら千隼くんの後を追う。
足の長い千隼くんは私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれており、そういう優しさは昔と変わってない。
