君が最愛になるまで

「知りたい?」

「ふふっ、うん、知りたい」


真夏ちゃんは情報通ではあるが実は口は固いため、得た情報は私や要くんにしか話していない。
だからこそ私たちが話した内容も真夏ちゃんから漏れることはない。


話したいと思ってくれているのはきっと私や要くんに対する信頼の証なのだろう。
私もそれに応えたいからこそ、聞いた内容は心の内に留めておいていた。


「日替わり弁当始まったみたいだよ」

「日替わり弁当?」

「ほら、前言ったでしょ?早乙女さんが前の会社でそうだったって。いつも隣を歩いてる女性が違うって話」

「ああ、そういえば⋯そんなこと言ってたね」

「まぁだけど今は日替わりじゃなくて週替わりみたいだけど」


分かってはいたけどやはりその事実を知ると心がチクッと痛む。
やっぱり本当だったんだと突きつけられた気がして、傷つく自分がいた。


彼女でもない私がそう思うのはおかしいのは分かっている。
だけど千隼くんの幼なじみとして、やっぱり少しだけ悲しい。


「金曜日にたまに女性と会社出てくんだって。それを見てる人が何人もいるらしいよ」

「金曜日⋯⋯」


なぜ千隼くんが金曜日を選ぶのかは分からない。
真夏ちゃんの言うことが正しければその日はきっと週替わりで別の女の人と夜を過ごしていることになる。


「結構噂は広まってるから女の子たちも隠そうとしてないんだって。だけど実際には結構な数を断ってるみたいだけど」

「そうなんだ」

「2週連続で女の人と一緒に歩いているところを見たって話を聞いたから、今日もなんじゃないかって私は踏んでる。今日は誰となんだろうね」


チラッとみんなが見渡せる位置で作業している千隼くんを見た。
パソコンの画面を真っ直ぐ見ながら作業する姿は黙っていてもかっこよくてモテる理由もすごく分かる。


それと同時にふと気づいてしまったことがあった。
私とご飯に行くのは決まって金曜日以外だ。


もしその日をそういうことをする日と決めているのだとしたら、私はそういう対象ではないのだろう。
自分で断っておきながらその事実を知ってしまうとまたチクっと心に針が刺さった。


「なんの話してるの?」

「つむつむと2人で内緒話してたのに〜邪魔しないでよね」

「えーひどー。俺も混ぜてよ。同じ同期じゃん」

「かなめんも知ってるでしょ?早乙女さんの話だよ」

「あーあれね。まぁ誰が何してようが俺には関係ないしな」


その口調からして要くんも噂を知っているようだ。
本当にその話はいろんな人が知っている内容なんだと改めて実感した。


そんな話をしていると真夏ちゃんが他のデザイナーに呼ばれたため、私と要くんだけが席に取り残された。
私に近づきながらコソコソ話しをするように要くんが顔を寄せてくる。


「紬希ちゃんも早乙女さんみたいな人がタイプなの?」

「え?いや、そういうわけじゃ⋯⋯」

「慣れてる感じの方がやっぱモテるのかな?」

「ん〜どうだろ。私は別にそこは気にしないかな」

「一途な方が好印象?」

「そうかも。誰かを想い続けられるのって簡単じゃないから素敵だと思うよ」


そう言って要くんの顔を見つめると彼はなぜか嬉しそうに微笑んでいた。
不思議に思い、ん?と表情で伝えるも、なんでもないよと笑顔でかわされる。


要くんはどちらかと言うと整った顔立ちをしているだろう。
人懐こいし誰とで仲良くなれる彼のことをかっこいいと思う女性は少なくないはずだ。


「俺、結構一途だから紬希ちゃんがそう言ってくれて自信ついた」

「要くんも好きな子いるんだ?」

「んーまぁね。でも全然気づいてくれないけど」

「要くんなら絶対うまくいくよ。だってこんなにも優しくて素敵なんだもん」

「そうかな?ならもう少し俺も分かりやすくアピールしてみる」