君が最愛になるまで

知らない女の人を抱いた手で触れてほしくないと咄嗟に拒否反応を示してしまう。
そんなことを言う資格なんて私にはないというのに。


「ごめん、千隼くん。今日はもう帰るね」

「なんでだ?せっかく久しぶりに会ったのに」

「うん⋯ごめん。お金、これで足りるかな?」

「いらない。俺が払うから」

「それは悪いよ。私にも払わせて」

「⋯ならまたご飯行こう。そんときは紬希に奢ってもらう」


次がまたあるんだと、そう思わせてくれる言葉に嬉しいと感じてしまう自分がいた。
やってることはきっといろんな女の人を傷つけた最低な行為なのに。


拒否した私をまたご飯に誘ってくれようとしているのは純粋に嬉しい。
だけどどこか素直に喜べない自分もいて、気持ちがふらついてモヤモヤしてしまう。


「送ってく」

「ううん、1人で帰れるから」

「なんも⋯思い通りにいかねーな」

「え?どういうこと?」

「なんでもない。気をつけて帰れよ」


千隼くんの言葉の意味を私は理解できなかった。
どういう意味で言ってくれているのか、それを知るには私は千隼くんを知らなさすぎる。


千隼くんを置いて私は一足先にお店を出た。
10年ぶりに初恋の幼なじみに再会し心躍るのなんて一瞬の出来事で。


大人っぽく成長した私の幼なじみは知らない一面を持っていて、どこか一線を引いたような諦めたような目をしていた。
そんな千隼くん相手に私はまだどこかで昔と同じように話せるんじゃないかと考えている自分がいた。


この再会が私たちの止まっていた時間をゆっくり進ませる。
これから待つそんな運命を私たちは知る由もなかった。