保育園に着くと、他の園児達がいない保育室に、翔真が真名と一緒に椿を待っていた。
翔真はふてくされた顔で、小さな拳を握りしめながら、床に視線を落としていた。
そして椿の姿を見とめると、「ママ!」と抱きついて来た。
椿は翔真と目線を合わせ、問いかけた。
「どうしてケンカなんてしたの?」
「だって健太が悪いことしたんだもん。」
事のあらましを真名が丁寧に話し出した。
「健太君が明里ちゃんの遊んでいたお気に入りの人形を取り上げてしまったんです。健太君は人形を乱暴に振り回し、園庭を走りまわっていたそうです。明里ちゃんはそれで大泣きして・・・。それを見ていた翔真君は、健太君からその人形を取り返そうと追いかけたんです。そこで押し合いになり、弾みで転んだ健太君は運悪く右足を捻挫してしまったんです。」
「そうだったんですね・・・。」
翔真は悪意を持って、相手の子に怪我をさせたわけではなかった。
しかし、健太に怪我をさせたのは事実だ。
そのことについてはしっかり謝らせなければ・・・



