「龍さん。ありがとう。」

「ん?」

「龍さんが連れ出してくれなかったら、私こんなに楽しい休日を過ごせなかった。こんなに大きな声を上げて笑ったのも久しぶり。」

「そうか。良かった。・・・なあ、椿さん。」

「なあに?」

「椿さんが一人で行動したいとき・・・例えば美容院へ行きたかったり、ママ友とランチしたかったり、とにかく何か用事が出来たときは遠慮せずに俺を頼ってくれ。俺の都合さえ合えば翔真を預かるから。」

「・・・ありがとう。」

龍の心遣いが嬉しくて、椿の胸がほんのり温かくなった。

「・・・そうだ。」

椿は小さな葛藤を振り払い、バッグからスマホを取り出した。

「龍さん。連絡先交換してくれない?その・・・龍さんが長く家を空けていたから、実はすごく心配していたの。」

椿の言葉に、龍は心底驚いたように、目を見開いた。

そして何かを探るように、目を伏せた。

「そうか・・・そうだよな。自分から家族になりたいなんて言っておいて連絡一つせず・・・まさか椿さんが俺を心配してくれているとは思わなかったから・・・本当にゴメン。いつでも連絡してくれ。俺もするから。」

龍もスマホを取りだし、ふたりは連絡先を交換した。

椿はスマホ画面に現れた龍のアイコンをみつめた。

それは椿と龍を繋ぐ、一本の糸のように思えた。