「わあ!高い!!」

観覧車が空に近づくごとに、椿の心は弾んだ。

梅雨明けの空は、真っ青な色に染められている。

ふわりと白い雲が天使の羽の形に見えた。

風が遠くの木々の緑を静かに揺らしている。

絶叫系アトラクションと同じくらい、椿は高いところが大好きだ。

目を輝かせながらガラス窓の外に広がる街の景色を眺めていた椿は、自分を優しくみつめている龍の視線に気づき、急に落ち着かなくなった。

「・・・子供みたいって思ってるでしょ?」

「ああ。子供みたいで可愛い。」

椿はガラス窓に映る自分を見ながらつぶやいた。

「いつもの私は大人なのよ?」

「大人な椿さんも魅力的だ。」

龍のストレートな言葉が、そのときは何故か素直に受け入れられた。