しかしそう思っていたのもつかの間、部屋の扉がドンドンと鳴らされた。

「椿さん!いるんだろ!」

龍が大声で叫びだした。

「ちょっ・・・」

椿は仕方なく、玄関のドアを少しだけ開けた。

「なんだ。椿さん。やっぱりいるじゃないか。」

「近所迷惑なことするのやめてもらえます?・・・なにかご用?」

「いや・・・俺、この一週間久我山学園大阪高の視察を親父に突然頼まれてさ・・・。さっきやっと帰ってきたところなんだ。これ土産。翔真と食べてくれ。」

龍は大阪で有名な肉まんの入った紙袋を椿に手渡した。

「ありがとう。それじゃ。」

そうそっけなく扉を閉めようとした椿に抵抗するように、龍はわずかに眉を寄せ、ぐいっと再び扉を開けた。