車の運転席には、ショートカットで黄色いブラウスにスラリとした白いパンツを履いた、若くて美しい女性が座っていた。
その洗練された雰囲気は、自分とは違う世界の女性だと椿は思った。
隣の助手席には、黒いポロシャツにチノパンを履いた龍がくつろいだ様子で座っている。
女性は龍の髪に手を触れ、微笑んだ。
龍も照れくさそうな笑顔になる。
ふたりは親しげに何かを話し始めた。
スーツではないのだから、きっと私用なのだろう。
なんだ・・・龍さん、ちゃんと素敵な彼女がいるんじゃない。
ふたりで旅行にでも行っていたの?
それなのに私に結婚を申し込んだの?
まったく人を馬鹿にして・・・
椿が再び視線を向けると、ポルシェが静かに走り去る音だけが耳に残った。
しばらくすると隣の部屋のドアが、ゆっくりと開く音が聞こえた。
椿は小さくため息をつき、再び洗濯物を干し始めた。



