翔真達を見送り、椿は自宅マンションの部屋のドアを開けようとして、隣の304号室をチラリと見た。
もう一週間、龍は自宅に戻っていないようだ。
物音も気配も一切しない。
龍には龍のプライベートというものがある。
椿は龍の親戚とはいえ、龍の行動を把握する権利も義務もない。
でも・・・隣に住んでいるのだから、長く家を空けるなら一言くらい伝えてくれればいいのに・・・
龍が不在の日々に、椿の心には何故かすきま風が吹いている。
龍さんの身に何かあったのかも・・・
そんな考えがふとよぎり、いつ隣の部屋の扉が開くのかと心待ちにしている自分がいた。
モヤモヤとした気持ちを抱えながら、椿は自宅の部屋に入った。
強い日差しの中、溜まっていた洗濯物をベランダで干していた椿は、自宅マンションの前に止まっているシルバーのポルシェを目にし、胸の内がざわついた。



