椿はリュックを背負った翔真を連れて、待ち合わせ場所の真田家の住むマンションの前へ行き、無事二人と合流した。

マンションの前には柔らかな日差しが差し込み、子供達の笑い声がエントランスに響く。

祐子が椿に尋ねた。

「晩ご飯も一緒に食べさせてもいい?」

「そんな・・・そこまでしてもらっていいの?」

「いいのよ。一人も二人も一緒だし、和樹も喜ぶし。」

「ありがとう。じゃあお願いしようかな。」

「夜9時までには翔真君をお家に届けるから、心配しないで?」

「わかった。翔真が何かしたら、遠慮無く怒ってね。」

祐子は眼鏡の奥の目を細めながら、微笑んだ。

「大丈夫よ。翔真君はお利口さんだし、素直で良い子だから。さ、じゃあ行こうか。」

「ママ、行ってきます!」

「いってらっしゃい。気を付けてね。」

椿はそう言って駅へ向かう3人に手を振った。

椿の胸に一抹の淋しさが漂う。

けれど翔真の嬉しそうな笑顔に、椿の顔にも自然と笑みが浮かんだ。