その日の夜、翔真を寝かせた後、椿は仏壇の前に座った。
信の位牌をみつめ、椿はそっと手をあわせ、胸の中でつぶやいた。
信、ごめんね。
私、あなた以外の男の人の部屋に泊まってしまったわ。
でも大丈夫。
私はずっとあなたのことを・・・
それにしても・・・信のお兄さんって面白い人ね。
あの人といると、私、心がフッと軽くなるの。
・・・ねえ、信。
どうしてあなたは久我山家を捨てたの?
どうして私に家族を紹介してくれなかったの?
私に知られたくない何かがあったの?
椿の問いも空しく、写真立ての中で笑う信はなにも答えてはくれなかった。



