椿は勢いよく、龍に頭を下げた。
昨夜の醜態に、恥ずかしさがこみ上げる。
「おはようございます。昨夜はすみませんでした!片付けも手伝わず、しかも泊まってしまうなんて・・・」
「気にするな。部屋は違えど同じ屋根の下に住んでるんだから問題無い。朝食、食べるだろ?あー・・・一応言っておくが、俺は君をベッドに運んだだけだ。何もしていない。」
「わかっています。」
そんなことをしない男だということくらいは、龍のことを理解しているつもりだ。
テーブルを見ると、ふんわりと焼き上げられたオムレツと、みずみずしいサラダ、それに昨日買ったのであろうクロワッサンが3人分並んでいる。
「本当にごめんなさい。何から何まで・・・」
「いつもはしっかり者の椿さんが、昨夜はいつになく素直で、とても可愛かった。」
龍は椿の瞳を覗き込むようにみつめながら、そう言って微笑んだ。
「もう・・・忘れてください!」
そして龍は真面目な顔で頭を下げた。
「君の深い悲しみも知らず、余計なことを言って、本当に悪かった。」
「・・・・・・。」
これまで信にも酔った自分を見せたことなんてなかったのに・・・
昨夜は何故か、今まで胸に押さえ込んでいた色んな感情を解放出来た。
シャンパンだけのせいではなく、龍さんの優しい言葉に酔ったのかな・・・



