ハッと気がつくと、椿はベッドで横になっていた。
頭がガンガンする。
目を開けると、自宅ではない部屋の家具やインテリア・・・
ふと隣を見ると・・・翔真が眠っている。
椿の衣服もそのままだ。
えっと・・・龍さんの家ですき焼きを食べて、お酒を飲んで、酔ってしまって・・・
椿はゆっくりと身体を起こした。
ふらつく足取りで寝室を出ると、キッチンの奥に、見覚えのある背中があった。
「・・・信?」
しかし振り向いたその背中は、エプロンを付けた龍だった。
「おはよう。椿さん、もう酔いは覚めたか?」
その屈託のない笑顔を向けられて、何故だかチクリと胸が痛んだ。
そして改めて思い知らされた。
信はもうこの世のどこにもいないのだ、と・・・



