椿は酔いでトロンとした目を龍に向けた。
「大体あなた、どういうつもり?お金持ちのくせにこんな古いマンションに越してきて・・・、馬鹿じゃないの?」
もう何杯目のシャンパンだろう。
ああ、完全に飲み過ぎてるわ・・・
龍はまったく酔っている様子を見せず、つまみのチーズを口にしながら憮然とした顔で言った。
「椿さんと翔真の近くにいたいという気持ちのどこが馬鹿なんだ?」
「だって・・・私達の為に生活レベルを下げるなんて大馬鹿よ。」
呂律の回らない椿の問いに龍は答えた。
「君はなにか勘違いしているようだな。たしかに家は金持ちだし、将来的にその財産を俺は継ぐだろう。だが俺の両親は厳しい人でね。生活費と学費以外は自分でなんとかしろっていう教育方針で、学生時代は朝から晩までバイト三昧だった。だから金銭感覚は君とそんなに違わない。まあ車や衣服には立場上舐められないように多少金をかけてるが・・・他は特にこだわりもない。」
椿はふと視線を巡らせた。
たしかに龍の部屋は驚くほどシンプルで、余計な装飾品もない。
高価な家具やブランド品が並んでいると思いきや、あるのは機能的なインテリアだけだった。



