「・・・あたしだってさ・・・翔真に何でも食べさせてあげたいわよ。でもさ・・・あたしにはもう翔真しかいないんだよ。翔真が病気にならないように頑張ってるんだよ。それをエラそうに・・・あんたになにがわかるっていうのよ・・・うっうっ」
そう言って泣きながら、椿はまたシャンパンをぐぴりと飲んだ。
シャンパンが喉を通るたび、少しづつ胸の奥の苦しみが紛れる気がした。
「ぜーんぶ信が悪いんだ。信が私と翔真を置いて逝っちゃったから・・・」
「・・・椿さんって泣き上戸だったのか。」
龍は驚いた顔でそうつぶやき、苦笑いした。
「そうだよな。俺が悪かった。椿さんは本当に偉いよ。ひとりで翔真を育てて、必死に守りながら頑張ってる・・・。」
龍は椿の頭を優しくポンポンと2回叩いた。
「でも椿さんは頑張りすぎているところがある。だからその重荷を少し俺にも分けて欲しいって思っただけなんだ。」
「そんなこと言って・・・あなたの目的は翔真でしょ?私のことなんてどうでもいいんでしょ?」
「それは違う。俺にとって椿さんは翔真と同じくらい大切だ。いや、どちらかといえば椿さんの方が・・・」
そう言いかけて、龍はゴホンと咳払いをした。
そんな甘い言葉には騙されないんだから・・・
でも・・・本当はずっと誰かに言って欲しかった。
『偉いね』って・・・
『頑張ってるね』って・・・
そう認めて欲しかったの。



