「この店はね、お豆腐が美味しいの。生産者が鮮度にこだわって作っていて、朝一番に納品されるの。そのわりには値段もお手頃だからコスパがいいのよ?」
「ふむ。」
龍は神妙な顔で、椿の説明を真面目に聞いている。
「お野菜も無農薬のわりに安いからお買い得。」
「なるほど。椿さんらしいオススメだな。」
「それと、このスーパー、珍しく手作りパンを扱っているの。仕入れ先の八巻ベーカリーさんが毎日出荷してくれるんだけど、すごく美味しいの。」
椿はパンコーナーの棚を指さした。
ずらりと並んだパンから、香ばしい匂いがほんのり漂っている。
「ここのパン、翔真も大好きなのよ?」
「ほう。たしかに旨そうだ。よし、明日の朝食に買っていくか。」
龍は熟考した後に、半熟卵の入ったトロ玉カレーパンと減塩バターを使ったクロワッサンを購入した。
「まあ、こんなところかしら。あとは通いながら自分で開拓してくれる?」
「ああ。ありがとう。助かったよ。」
「いいえ。また何かあったらなんなりと。あなたはお客様なんだから。じゃあ、私は仕事に戻るわね。」
そう踵を返した椿に龍が声を掛けた。



