「お蕎麦、本当に美味しかったわ。翔真も大喜びだったし。」

「それは良かった。」

「でも、私はあなたと結婚する気はありません。もちろん、翔真を手放すつもりもありません。」

椿は改めて、毅然とした口調で言い切った。

「ああ。それでも構わない。俺はただ、甥の為に出来ることをしたいだけだ。もちろん、翔真君を育てる君の役にも立ちたいと思っている。何でも俺に、遠慮なく言って欲しい。」

「・・・・・・。」

「じゃあ荷物の整理があるから、今日はこの辺で失礼するとしよう。」

「・・・お蕎麦、ご馳走様でした。」

かろうじてそういう椿に、龍は軽く片手を上げた。

「次は椿さんの手料理をご馳走してくれ。」

そう言い残し、龍は隣の部屋へ戻っていった。