部屋に入るなり、龍は真剣な表情で口を開いた。

「信に線香を手向けてもいいだろうか?」

「あ・・・ええ、どうぞ。」

龍は仏壇の前に静かに座り、線香を手向けると、目を閉じて手を合わせた。

やがて目を開き、椿の方へ顔を向け、深く頭を下げた。

「葬儀に参列出来ず、すまなかった。その時はまだ信の居場所すら分からずで・・・。今度、墓参りをさせてもらえないだろうか?」

「・・・こちらこそ、申し訳ありませんでした。ご親族がいることを知らずに、案内もせずに。」