椿がドアを開けると、一ヶ月前に顔を合わせた人物が立っていた。

「久しぶりだな。」

今日はスーツ姿ではなく、白いパーカーにジーンズを履いていたため、一瞬誰か分からなかった。

「龍・・・さん?」

「顔と名前は覚えてもらえていたようだな。不審者扱いされないかとヒヤヒヤしていたんだが。」

「何しに来たんですか?もうお話は終わったはずですけど。」

椿の強ばる表情にまったく臆せず、龍は片手に持った紙袋を差し出した。

「これ・・・ベタすぎるが、蕎麦だ。」

「蕎麦・・・」

まさか・・・これって・・・