「俺は椿さんを、とても好ましく思っている。」

「・・・なにいい加減なことを・・・。私のことなんて何も知らないくせに。」

「知ってるさ。ここ3ヶ月、君のことをずっと見ていた。スーパーで熱心に働く椿さん、翔真君と公園で遊ぶ椿さん・・・その姿を見て、俺は君を心から可愛らしくて素敵だと思った。俺の妻としてふさわしい女性だ。」

「お世辞は結構です。結局、あなたは翔真の母親としての私が欲しいだけでしょ?」

「約束しよう。俺が君と翔真君を幸せにする。」

そう真面目な顔で告げる龍に、椿は小さく首を振った。

「お気持ちはありがたいですけど、私はまだ信を愛しています。」

龍は顎に手を当て、虚空をみつめた。

「結婚に、本当に愛は必要なのか?俺は愛なんてそんなに重要じゃないと思うが。」

「重要ですよ!」

「そうか?俺は女を本気で愛したことがないからわからない。」

「・・・・・・。」

「俺は跡取りが欲しい。君は安定した生活が欲しくないか?翔真君に最高の教育を受けさせたくないのか?俺なら君と翔真君にそれを与えることが出来る。まさしくWin-Winの関係。」

「それは・・・。」

椿は図星を指され、黙り込んだ。