「翔真君は驚くほど聡明な子だ。翔真君に保育園での生活を尋ねてみたが、実に的確でわかりやすい返答だった。もし知能テストを受けさせたら、間違いなく高い点数を叩き出すのではないかと思う。」

「・・・・・・。」

「ひとえに君の教育が素晴らしかったのだろう。」

「私は普通に翔真を育ててきただけです。」

「翔真君こそ久我山学園の後継者にふさわしい子だ。だから是非とも俺の子として迎えたい。」

龍の真剣な表情に、椿はこの男が冗談で言っているのではなく、本気なのだと気付いた。

だからと言って絶対に翔真を渡すわけにはいかない。

龍の言葉を受け、椿は情に訴えかけるように言った。

「翔真を褒めてくださるのはとても嬉しいです。でも・・・だからと言ってあなたに翔真を渡すことは出来ません。翔真は私のすべてです。あの子を失ったら、私は生きていけません。お願いします。翔真を私から取り上げないでください!」

椿は深く頭を垂れ、ぎゅっと目を閉じた。