目の前で満足そうに微笑む男の顔をそっと盗み見る。

この笑顔・・・なんだか懐かしい。

初対面なのに、やけに馴れ馴れしい言葉使いにも、信に似た優しい目で言われると、何故か許せてしまう。

しかしこの男は信とはだいぶ性格が違うようだ。

信は謙虚で優しいが、どこか気の弱いところがあった。

けれどこの男は堂々として余裕があり、自信に満ち溢れている。

前髪をセンター分けにし、眉と目元がきりっと上がった男っぽいイケメン。

高身長で肩幅は広いが、全体的にスラリとした印象というルックスの良さも、その立ち振る舞いに関係しているのだろう。

やはりこの人は本当に信のお兄さんなの?

そして何故、今頃私の前に現れたの?

数々の疑問が渦巻くが、とりあえず男の話を聞くことが先決だ。

椿はそう思い、自らもコーヒーを口にした。

コーヒーの味など詳しくない椿にも、そのコーヒーにコクがあり香りも一級品だということがわかった。

一杯いくらするんだろう?

いつも買い物をするときに、必ず値段表記とにらめっこする椿は、ついそんなことを考えてしまった。