「美味しそう・・・」
つやつやと輝くムース・オ・ショコラ、繊細なココナツクリームを乗せたストロベリータルト、マスカルポーネとピスタチオクリームを挟んだプチシュー・・・
椿は目の前の華やかな洋菓子をじっと見つめ、思わず感嘆の息を漏らした。
「いいんですか?こんな高級なスイーツ、ご馳走になって・・・」
「いいに決まっているだろう?君の為に用意したものだ。好きなだけ食べるがいい。」
目の前の男は、ゆったりと右手を椿へ差し出し、促すように微笑んだ。
「じゃあ・・・頂きます。」
ケーキをフォークで刺し、ゆっくりと口に入れる。
絶妙な甘さと酸っぱさが口の中でコラボする。
うーん、幸せ・・・
じゃなくて!
危ない・・・うっかり味わってしまうところだったわ。
椿は今日ここに来た目的を思い出し、一口だけ食べてフォークを置き、気を引き締めた。



