「いえいえ。翔真君は園内の誰にでも優しくて、穏やかな良い子ですよ。決して問題行動を起こしたりはしていません。」

「そうですか・・・」

椿は心からホッとした。

では、話ってなんだろう?

真名は丸めて持っていた一枚の画用紙を広げた。

そして椿が良く見えるように、向きを逆にして机の上に置いた。

「これ・・・翔真君が描いた絵です。」

「・・・・・・?」

それはある絵本の一ページを真似た、動物達の絵だった。

繊細なタッチで色鮮やかにクレパスを使って描かれている。

「これが何か?」

そう平坦に答えた椿に、真名は興奮した様子で声のトーンを上げた。

「何か?じゃないですよ!この絵、凄いです!こんなに完成度が高く感性の鋭い絵を描く園児はそうそういないです。私の保育士人生の中でも、これほどレベルが高く素晴らしい園児の絵を見るのは初めてです!」

「・・・そうなんですか?」

たしかに椿も翔真の絵は上手い、とは思っていた。

けれどそこまで賞賛されるほどだとは思いもしていなかった。