「そうねえ。バレエなんかいいんじゃないかしら?」

「バレエ?!お月謝、高いんじゃないんですか?」

幸枝が眉を上げて言った。

「それくらい、孫の為なら、安いものよ。」

美子はこの仕事を生活費を稼ぐというよりも、家にいる時間がもったいないという理由で働いている有閑マダムだった。

だから孫の習い事の月謝の捻出くらい、わけないのだろう。

「実は私も子供にピアノを習わせようかなって思っていて。」

幸枝が両手で指を動かしながら言った。

幸枝の娘は今年小学1年生の女の子だったはずだ。

「娘が友達のピアノ発表会を観に行って、私もピアノ弾いてみたいって言い出して。」

「あら、いいじゃない。早いほうがいいわよ。習わしてあげたら?」

美子の言葉に幸枝も大きく頷いた。

「はい。今度ピアノの講師をママ友に紹介してもらおうと思ってるんです。」