昼休憩に入り、椿は幸枝や他のスタッフ達と昼食を食べていた。
椿は節約のために作っている小さな弁当箱に入った昨夜の残りの惣菜を口に入れながら、なにげなく他のスタッフ達の話を聞いていた。
スーパーのスタッフは圧倒的に女性が多い。
椿のような30代から、もう孫がいる老年期に入りかかった世代まで、幅広い年齢の女性が働いている。
今日の話題は子供や孫の習い事についてだった。
孫を目に入れても痛くないほど可愛がっている沢村美子が声高に言った。
「やっぱり習い事は早ければ早いほどいいのよ。子供の成長は早いし、少しスタートが遅れるとそれだけ差がついてしまうからね。それなのにウチの嫁は、のびのびと遊ばせたいからまだお稽古ごとはさせたくないってさ。ああもどかしい。」
「沢村さんはお孫さんに、なにを習わせたいんですか?」
幸枝の問いに、美子はうーんと首を横に倒して考え込んだ。
美子の孫は翔真と一才違いで、まだ4歳の女の子だ。
前にスマホで美子に写真を見せてもらったことがあるけれど、頬がぷっくらとしたまだまだ幼い女の子だった。
椿は美子の嫁と同意見で、まだ習い事は早いのではないか?と思っている。
それ以上に、今は翔真の習い事の月謝を払う余裕がない。
情けないと思いつつも、それが椿の現実だった。



