「俺は信が羨ましかった。本当は信のことが憎かった。死ぬほど妬ましかった。信は母親の愛ばかりか、椿さんと翔真という温かい家族の愛まで持っていた。だが・・・信はもういない。それなら俺が全部奪ってやろうと思った。信が手にした椿さんと翔真を・・・。だから君達に近づいたんだ。俺は信への復讐の為に椿さんと翔真を利用しようとしたんだ。そんな俺が君達のそばにいる資格なんてない。」

「・・・・・・。」

「それに・・・俺はいつまでたっても信には敵わない。」

龍はそうつぶやき、何かを諦めたような、切ない顔で椿に微笑んでみせた。

それは椿が初めて見る、龍の姿だった。

「許してくれとは言わない。短い間だったけど、俺は本当に幸せだった。ありがとう。この絵が描き上がったら俺は・・・」