「・・・俺は椿さんが思っているような優しい人間じゃない。最低な男だ。」
龍が静かに筆を置いた。
「俺は消えた信をすぐには探そうとしなかった。心のどこかで思ってたんだな。信が消えてくれて良かったって・・・。母親の愛情ってヤツは信にくれてやった。だからせめて理事長の座が欲しかった。信が消えてそれが叶ったんだ。」
「・・・・・・。」
「親父はもう信のことは放っておけと言った。母もあのとおり認知症だ。そのまま信をいないものとしておくことも出来た。だが・・・やはり俺は信の行方が気になって仕方がなかった。そうしてやっと信の行方を突き止めた時、すでに信はこの世を去っていた。」
「・・・・・・。」
「そして信が残していった家族がいることを知った。それが椿さんと翔真だ。」
「・・・・・・。」



