モデルになった椿は椅子に座り、ポーズも取らず、ただ前を向く。

誰かの絵のモデルになるなんて中学の美術の授業以来だ。

初めは緊張していた椿だったが、適度に龍が話しかけてくれるので、日を追うごとにリラックスし、モデルをすることに慣れてきた。

ある日、筆を進めながら、龍が言葉を漏らした。

「椿さん・・・綺麗だ。」

「そうやって何人のモデルさんを口説いてきたの?」

「モデルを口説いたことなんて一度もないさ。俺にとって絵を描くことは聖域だからな。」

「・・・・・・。」

「でも、椿さんは特別だ。」