「旦那様が自らの愛人である吉井涼香さんとの子を引き取りたいと言い出したのは龍様が5歳、信様が4歳のときのことでした。涼香さんは子供を残し、他の男性と失踪されました。涼香さんの行方は今もってわかりません。」

「・・・・・・。」

「残された子は養護施設へ預けられました。それを知った旦那様が自ら養育されるために久我山家にお引き取りになったのです。もちろん沙織様は烈火の如く怒り狂い、反対なさいました。しかし旦那様の決意は固く、結局その子は久我山家で育てられることになりました。

沙織様は自分の子と愛人の子を徹底的に差別されました。育児も実子にだけ自らで行い、庶子であるその子は全て家政婦に任せっきりでした。」

愛人の子である龍さんは、やはり久我山家で冷遇されていたのだ・・・

椿はやりきれぬ思いを胸に、唇をかみしめた。