しかし、一体どのような用事で来られたのだろう・・・?

そう思った椿に、陽子が改まって言った。

「これ・・・旦那様と奥様が是非翔真君にと、私に持たせたものです。」

陽子はバッグから白い封筒を取り出した。

「これで、翔真君に辞典や本を買ってあげて欲しいと言っておられました。受け取って頂けないでしょうか?」

封筒の中には数十万円分の図書券が入っていた。

「こんなに・・・」

「龍様から翔真君は大変頭が良い子だと聞いております。これを翔真君のために役立てて頂けないでしょうか?旦那様と奥様に代わって、何卒よろしくお願いします。」

そう深く頭を下げる陽子に、椿はあわてて言った。

「陽子さん、頭を上げてください!・・・わかりました。これは有り難く頂戴して、翔真の為に使わせて頂きます。」

椿の言葉に陽子がホッとしたような顔になった。

「受け取って頂けなかったら、奥様に怒られてしまうところでした。」

「あの・・・お義母様はそんなに怒ると怖い方なんですか?」

「それはもう、雷が落ちるという形容詞通りです。」

陽子は相変わらずの無表情で、そう言った。

「それは信や龍さんにも・・・?」

「・・・・・・。」

椿の問いに陽子は、しばし黙り込んでしまった。