龍は箱の中にある写真を次々と手に取り、興味深そうに見た。

そして椿と信、そして幼い翔真が自然豊かな山々をバックに、三人仲良く微笑む写真をじっとみつめた。

「これはね、茨城の筑波山へ行ったときの写真。」

「・・・幸せそうだな。椿さんも翔真も、信も。」

「うん。幸せだった。」

椿は、静かにそう頷いた。

「俺には知らない世界だ。」

そう言って淋しそうに微笑む龍に気付き、椿の胸がずきんと痛んだ。

こんな写真、見せなければ良かった・・・

さらに龍は言った。

「信のこんなに柔らかい笑顔、久我山の家では見たことがない。・・・家を出て、信は幸せだったんだな。きっと久我山の家族は居心地が悪かったんだろう。特に俺は信に嫌われていたし。」